データで読む世界と日本

高等教育の拡大に伴い、増大する教育支出
OECD『図表でみる教育2022』


 

2000年に入り、世界各国で高等教育への進学率が上昇し、教育支出が増大している。経済協力開発機構(OECD)の報告書『図表でみる教育2022年版』によると、25歳〜34歳の年齢層における高等教育修了者の割合が最も高いのは2021年で韓国(69%)、次にカナダ(68%)、日本(65%)、ルクセンブルク(63%)、アイルランド(同)が続く。OECD平均は47%で、2000年と比べると21ポイント増となった。
 高等教育入学者を専攻分野別にみると、日本は19年時点で高等教育新規入学者のうち工学、製造、建築を専攻する女性は16%で、OECD36カ国中で最も低い。さらに大学の研究や教育に携わる女性比率は30%で、OECD平均45%を下回り、女性の起用の遅れが浮き彫りになった。
 一方、在学者1人当たりの年間教育支出費は、2019年時点で日本は初等教育に9379ドル、中等教育に1万1493ドル、高等教育に1万9504ドルを投資しており、これはOECD平均とほぼ同レベルである。
 教育支出の私費負担割合をみると初等教育と中等教育の段階で日本は7%と、OECD平均10%より低い。ところが、高等教育段階になると日本は52%と、OECD平均22%の2倍超に跳ね上がる。一方、デンマークとフィンランドは0%、スウェーデン(1%)、ルクセンブルク(2%)、オーストリア(3%)なども極めて低い。
 また教育支出の対国内総生産(GDP)比は、2019年時点で日本は4.0%でOECD平均4.9%を大きく下回っている。
 OECDのアンドレアス・シュライヒャー教育・スキル局長は10月3日、オンライン記者会見で「日本では大学卒業後に家族や本人がローンを抱えている問題が起きている。他国に比べ必ずしも財政的に良い施策があるとは言えない」と日本の大学費用の家計負担の重さを指摘した。
 これに対して日本は、低所得者対象の高等教育修学支援新制度を2020年度から導入。24年度から国が授業料を貸与し、就職後に返金する「出世払い奨学金」制度を設けるなど、中間層の負担軽減を図っていく計画だ。

  (2022年12月号 no.385)